法人と個人事業でじつは違う 起業の前に知っておきたい社会保険

社会保険のイメージ

会社員であれば、「社会保険のことは会社に丸投げで、詳しくは知らない・・・」といった方も少なくないでしょう。

しかし起業するとなった場合、この点についてもしっかりと理解しておく必要があります。

事業主として事業を営む以上、知らなかったでは済まされず、これらの法令に違反した場合、高額な保険料を一括で請求されたり、罰則を受けたりすることもあります。

今回はこの社会保険について、法人と個人事業の違いについて説明します。法人と個人事業では、社会保険の内容が違ってくるため、起業を考えている場合には、しっかりと確認しておくようにしましょう。

また、社会保険は事業を営む上で、資金的にも大きく左右する部分になるため、会社の資金計画にも大きくかかわってきます。

さらに、「保険」という名前の通り、病気やケガ、老後に備えるための大切な部分なので、自身や家族の生活を守るためにも、起業前から知識をつけて万全な備えをしておきましょう。

目次

社会保険は細かく5つの保険に分けられる

「社会保険」といっても、具体的に何のことを指すのか、曖昧になっている方も多く見受けられます。

そこで、法人と個人事業で社会保険がどう違うのかを説明する前に、まず社会保険そのものについて説明します。

そもそも社会保険は、細かく分けると年金保険、健康保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つに分けられます。

この中の年金保険、健康保険、介護保険の3つを「社会保険」、雇用保険、労災保険の2つを「労働保険」とよぶこともあります。

また、このそれぞれで、法人と個人事業の取り扱いも異なってきます。そこで今回は、この5つの保険に分けて、法人と個人事業の社会保険の違いを説明していきます。

法人と個人事業の社会保険の違い〔年金保険・健康保険・介護保険〕

まず、年金保険、健康保険、介護保険の違いについて説明します。この3つの保険の加入方法には2つのパターンがあり、分かりやすくいうと、一つは会社員などのパターン、もう一つはフリーランスなどのパターンです。

会社員などのパターンは、一般的に社会保険とよばれることが多く、各保険のよび名は厚生年金保険、健康保険、介護保険です。一方、フリーランスなどのパターンの場合は、一般的に国保とよばれ、各保険のよび名は国民年金、国民健康保険、介護保険です。

同じ自営業でも、法人の場合は会社員のパターンである社会保険の加入となりますが、個人事業の場合はフリーランスのパターンである国保の加入となります。なお、個人事業の場合でも、常に従業員を5人以上雇っている場合には、従業員を社会保険に加入させなければなりません。しかしこの場合でも、事業主本人は国保の加入となります。

そして、社会保険と国保の大きな違いは、保険料と保障内容です。

社会保険の保険料は、収入が多くなるほど高くなります。一方で国保の保険料は、国民健康保険と介護保険だけが収入に応じて変わり、国民年金は収入の額がいくらであっても同額です。なお、従業員が社会保険に加入する場合には、事業主が保険料の半額を負担しなければなりません。

次に保障内容の違いですが、大きく変わるのは年金保険の部分です。社会保険の場合は、国民年金に上乗せして厚生年金保険に加入しているかたちとなります。このため、将来受け取ることのできる年金の額も、国民年金に比べて多くなります。

また、健康保険の保障内容も少し異なり、出産手当金と傷病手当金は社会保険にしかない制度です。なお、出産手当金や傷病手当金とは、出産や病気、ケガで会社を休まなければならないときに、給与の支払いがされなかったり少なかったりした場合、一定の手当金が支給される制度です。

法人と個人事業の社会保険の違い〔雇用保険・労災保険〕

雇用保険と労災保険は、年金保険、健康保険、介護保険とは異なり、法人と個人事業とで違いはほとんどありません。

また、法人でも個人事業でも、基本的に事業主はどちらの保険にも加入することができません。これらの保険は、労働者の保護を目的としているため、従業員を雇う場合に加入が必要となる保険です。ただし、労災保険については特別加入制度があり、法人と個人事業のどちらも、所定の要件を満たせば事業主であっても任意で加入することができます。

なお、加入要件については、雇用保険の場合、雇用形態によって決められた加入要件にあてはまる従業員を加入させる必要があります。一方で労災保険は、雇用形態にかかわらず、すべての従業員が加入の対象となります。

保険料については、雇用保険の場合、事業主と従業員がおおむね2:1の割合で負担します。一方で、労災保険は全額が事業主の負担です。

それぞれの保険の概要は、雇用保険が従業員が失業した場合に再就職を支援するための保険で、労災保険が通勤中や勤務中の病気やケガ、死亡において、従業員やその家族を保護するための保険です。

法人でも個人事業でも社会保険について計画を立てておくことが大切

ここまでみてきたように、社会保険と一口にいってもさまざまな保険があり、法人と個人事業の違いもそれぞれで異なります。

例えば、年金保険、健康保険、介護保険に関していうと、法人の方が手厚い保障が受けられます。しかし従業員を雇用した場合には、その保険料の半額を負担しなければならず、その負担は決して小さいものではありません。

その反面、個人事業であれば、従業員を5人以上雇っていかぎり加入させる義務がないため、従業員の保険料負担もありません。そのかわりに、事業主は国保の加入となるため、法人の場合に比べて保障が薄くなってしまいます。このため、この点を補うために任意保険に加入するなどといった対策も考えておく必要があります。

また、雇用保険と労災保険は、法人、個人事業を問わず、加入対象の従業員を雇う場合にはどちらも事業主の保険料負担が発生します。

このように、法人と個人事業のどちらの場合でも、これら社会保険については、しっかりと資金計画を立てておかなければなりません。

しかし、自身にこれらの知識や経験がなく不安だという場合には、プロによるサポートや専門の支援サービスなどを受けることで、自信をもって事業を行うことができるでしょう。

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