起業したいという気持ちはあるものの、会社に勤め続ければ貰えるはずの退職金が貰えなくなるため、老後の資金面で不安になりますよね。しかし、起業者向けの退職金制度が存在するため、老後の資金面でのリスクを抑えられます。
この記事では、起業者向けの退職金制度や、その他の老後の資金面でのリスクを軽減する方法について解説します。ご覧いただくことで、老後の資金に対する不安が軽減されるでしょう。
起業者向けの老後の資産形成
起業者向けの代表的な老後の資産形成商品として、「小規模企業共済」という制度が用意されています。小規模企業共済とは、小規模企業の経営者や役員が老後の退職金用として毎月一定額を積み立てるものです。
掛金は、毎月1,000円~7万円の範囲で、500円単位で設定できます。また、掛金は後から増額・減額ともに可能です。納付方法は、「月払い」「半年払い」「年払い」から選択できます。
掛金のうち、8割は日本国債、2割は運用機関によって運用されます。そのため、利益や損失が出る可能性があります。直近5年間の利回りは、以下のとおりです。
・2017年:2.55%
・2018年:0.99%
・2019年:-0.07%
・2020年:5.26%
・2021年:1.40%
上記を見ると、比較的安全な資産運用がされていることがわかります。
共済金(退職金)の受取パターンは、下記の3通りです。
1.共済金A:個人事業を廃業した場合もしくは共済契約者が死亡した場合
2.共済金B:老齢給付(65歳以上で180ヵ月以上掛金を払い込んだ場合)
3.個人事業を法人成りした際、加入資格がなくなったため、解約をした場合
起業者が退職金制度を活用するメリット
先に小規模企業共済の概要を記載しましたが、老後資産形成に使える制度は他にもあります。いくつか紹介します。
小規模企業共済
起業者向けの退職金制度である小規模企業共済のメリットは、3つあります。
1つ目は、節税対策になることです。小規模事業共済の掛金は、全額が課税対象所得から控除されます。例えば毎月7万円を積み立てる場合、年間トータルで7万円×12ヵ月で84万円が控除されます。課税対象所得から84万円が控除されると、所得税・住民税に関しては仮に税率を所得税15%・住民税5%とした場合、年間約17万円の節約ができます。
2つ目は、老後のための資金に手をつけてしまう可能性が低くなることです。小規模事業共済で積み立てたお金は、途中解約しないと引き出せません。そして小規模事業共済の加入期間が20年未満の時点で途中解約をする場合は、解約手当金(解約時に貰えるお金)が掛金合計額を下回り、元本割れしてしまいます。そのため、余程のことがない限り老後のために積み立てたお金を使ってしまうことはないでしょう。
3つ目は、低金利の貸付制度を利用できることです。小規模事業共済の加入者は掛金の範囲内で事業資金の貸付制度を利用できます。貸付制度の種類によっては、即日貸付も可能です。
小規模事業共済の契約者が利用できる貸付制度には、以下のものがあります。
・一般貸付け
・緊急経営安定貸付け
・傷病災害時貸付け
・福祉対応貸付け
・創業転業時・新規事業展開等貸付け
・事業承継貸付け
・廃業準備貸付け
個人型確定拠出年金(iDeCo)
退職金ではありませんが、個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)も小規模企業共済と同様に老後の備えとなります。
iDeCoは、毎月決まった金額を老後の年金のための資金として積み立てる制度です。20歳以上65歳未満の公的年金被保険者であれば、誰でも加入できます。ただし、すでに企業型DCの加入者でもiDeCoに加入することができますが、拠出方法によっては加入できないため要注意です。
iDeCoの掛金は、自営業者等(第1号被保険者)の場合は月額6万8,000円が上限です。掛金の変更は、1年に1回のみできます。
iDeCoも小規模事業共済と同様に、積立金が運用されます。掛金の運用指図は、加入者の自己責任で行います。投資先の商品によりますが、iDeCoの平均利回りは、約3~5%です。
iDeCoの給付金には、「老齢給付金」「障害給付金」「死亡一時金」の3種類があります。老齢給付金は原則60歳以降(通算加入者等期間によっては受給開始がさらに先になる)での受取となりますが、障害給付金と死亡一時金は60歳未満でも受取可能です。
iDeCoの最大のメリットは、節税効果です。iDeCoでは、掛金が課税対象所得から控除されるうえ、積立金の運用益も非課税となっています。また、給付金受取時は課税されますが、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象となります。。
iDeCoと小規模企業共済は、併用が可能です。もし両方で毎月限度額を積み立てれば、毎年数十万円の節税効果が期待できます。
ただしiDeCoは、原則途中解約ができません。そのため、積み立てる金額は余剰資金に留めましょう。
国民年金基金
また、国民年金基金も老後の資金を用意するために有効な制度です。国民年金基金とは、自営業者など国民年金の第1号被保険者のために用意されている年金制度です。国民年金基金は、厚生年金に加入している正社員等と自営業者の年金の格差を解消する趣旨で用意されています。
国民年金基金の毎月の掛金は、iDeCoを含む確定拠出年金と合算して6万8,000円が上限となっています。ちなみに、4月から翌年3月までの1年分の掛金を前納すると、0.1か月分掛金が割引されるためお得です。
国民年金基金も小規模事業共済やiDeCoと同様に、掛金が所得から全額控除されるため、節税対策となります。また、万が一加入者が年金支給前に死亡した際は遺族一時金を受け取れることもメリットです。
ただし国民年金基金は、任意脱退ができません。したがって、iDeCoと同様に掛金は余剰資金の中から工面しましょう。
起業する前にbiz-life planningをしよう
小規模企業共済・iDeCo・国民年金基金いずれも、老後の資金を蓄えるのに有効な制度です。それだけではなく、節税などのメリットもあるため、普通に貯蓄を続けるよりもお得になる可能性が高いです。ぜひ利用を検討してみてください。
また、起業のリスクをより小さくするためには、『biz-life planning(起業のためのライフプランニング)』をしっかりと行うことが重要です。そうすることで、資金不足になる可能性を抑えられます。
私は中小企業診断士として3年間、多くの経営者や起業希望者の『biz-life planning』に関する相談に乗ってきました。そのため、あなたの老後に対するお悩みの相談にもご対応できます。中小企業診断士だけではなく、1級ファイナンシャル・プランニング技能士資格も保有しているため、より綿密な『biz-life planning』が可能です。
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